「愛と脱毛の東京OL物語」第6話 〜肌は無傷、心はボロボロ〜

■脱毛で深まる絆は、脱毛で壊れる

足"

 

 

あと、決戦の夜の間に取り組んでおきたいのが、顔の産毛の処理。なんせお互いの顔の距離が1番近づくときじゃないですか。ヒゲはおろか、ほっぺたやおでこの産毛で顔が黒ずんで見えたら、相手は間違いなく萎えますよね。

 

 

顔に足と同じ機械を使うのは嫌だけど、レイボーテだったらフェイスというランプもあるので、フラッシュを直接見ないように気をつけさえすれば安心です。いざキス…となったときに、つるすべお肌を見てほしいから…。

 

 

やっぱりただ自分磨きをするよりも、見せたい相手がいるほうが張り合いが出ますね。もちろん日ごろからケアしてこそのいい女だけど、モチベーションが全然違う。

 

 

なにより、ヨシオを思えばがんばれる自分に気づいて、自分の中のヨシオへの気持ちが、知らない間に大きくなっているのを感じました。

 

 

そしてやってきたディナーの日。私は特製のビーフストロガノフを煮込んでヨシオの到着を待ちました。今最寄り駅に着いたよっていうLINEから到着までの時間がとても待ち遠しく感じました。こんなにピュアな気持ち何年ぶりだろう。久しぶりの恋の感覚に浮き足立つ自分を止められませんでした。

 

 

やっとなったインターホン。マンションの玄関と私の部屋の扉、2度のインターホンを経て、ようやく彼は私の家にたどり着きました。

 

 

「うわ、めっちゃいいにおい! これは高まりすぎる!」

 

 

子供のように顔をくしゃくしゃにして笑うヨシオは、本当にかわいいと思いました。上がって上がって、と彼をリビングに通します。

 

 

「やっぱり双葉の部屋はきれいだね。想像通りっていうか、もっときれいっていうか…いい香りがする!」

 

 

はしゃぐヨシオにウェルカムドリンクとしてトロピカルジュースを出しました。ディナーのメニューはビーフストロガノフであることを伝え、あとで赤ワインを開けようねと約束しました。

 

 

じゃあ、料理の仕上げをするからリビングでゆっくりしててねと声をかけて、私は先ほど外したエプロンを再び首にかけてキッチンに戻ります。

 

 

お皿に盛り付け、生クリームで円を描いて完成です。お盆に乗せて彼の前に運びました。思わずほころぶ彼の顔を見たら、手間ひまかけて作ってよかったなーって、まだ食べる前なのに報われた気分でした。

 

 

彼はおいしいって言って食べてくれました。スプーンでひと口ずつ口に運ぶたび本当においしいと言うので照れくさいほど。夕食の時は幸せに過ぎていきました。

 

 

食べ終わったらヨシオは後片付けをしてくれました。そんなこといいのにって言ったんだけど、作ってもらって何もしないの悪いじゃんと言うのでお願いしました。田舎だと平気で上げ膳据え膳の男もいたので、あー私はヨシオみたいな人と結婚したいなぁと思いました。

 

 

その後2人で映画を見て、夜が更けていきました。はっきりと口では言わないけど、なんとなく本番が近づいているのはわかります。私はさりげなくヨシオに

 

 

「お風呂、先にどうぞ」

 

 

と促しました。じゃあお言葉に甘えて、とヨシオはバスルームに行ったので、私はその間に一張羅の下着を用意して、自分がシャワーを浴びたら着られるように準備しました。

 

 

私がお風呂から出ると、彼をベッドルームに誘導して、2人で横になりました。まずは軽いキスなどをしてイチャイチャしながら、さっき見た映画の話をします。ねぇ主人公に共感できた? ううんできなかった。私も。同じ感想を持ったのが嬉しくて、映画が退屈だったことはどうでもよくなりました。

 

 

ふと、彼はベッドの向こうの本棚に目をやりました。

 

 

「あ、あれ知ってるよ、脱毛器でしょ?」

 

彼は本棚の一角に置かれた「レイボーテグランデ」を目に留めてそのものズバリ言い当てたのです。あれ、これって男性も使うものだっけ、でも本体からは脱毛器だとわかりにくいから使ったことがある人じゃないとわからないはずだよな、でも本体の色がピンクゴールドなんだけど…微かな違和感を覚えます。

 

 

「やっぱり双葉はきれいにしまってるよねぇ。あれ優佳ちゃん家にもあったんだけどさぁ、あの子ちょっと雑じゃん、だから俺が行ったとき蓋開けて中身が出たまま放置しててさ…」

 

 

■脱毛フレンドのまさかの裏切り

女性

 

 

彼が地雷を踏んだことは、みなさんお気付きですよね。ヨシオはアホでした。ここまで話しきってからようやく、自分の過ちに気づいたんですから。

 

 

「へぇ、家に行ったんだ」

 

 

ヨシオは急に黙りました。私は彼の腕の中をくるっと抜け出して、彼の服を投げつけました。

 

 

「帰ってくれるよね? ここ、私の家だから」

 

 

「ち、ちがうんだよ、オレは…優佳ちゃんに誘われて…いやそもそも…そもそもオレらって付き合ってたっけ?」

 

 

私はその言葉を聞いて彼のカバンも投げつけました。

 

 

「どっちにしろサイテーなのはわかったからもう充分」

 

 

ヨシオは嘘をつくのも下手なのでしょう、おそらく優佳が誘ったのは間違いないと思います。だとしても、それをぽろっと言ってしまう軽さもまた、信用ならない男だなという悪印象に大きなリードをかけました。

 

 

ヨシオを追い出したあと、ひとりで泣きました。やっぱり私には男運がないのか、それとも私が女友達を作るのが下手すぎるのか、お人好しすぎるのか。悲しさと情けなさでいっぱいになりました。ヨシオのために、と思って着た普段は着ないようなセクシーな下着に身を包む自分がバカみたいで、余計に泣けました。

 

 

もう今年で私も30。同世代の男性は、良い人は結婚している位、余っていれば何らかの難ありだし、結婚相手を探すのが難しくなってきます。いや、自分も男性から見たらその「難あり」のひとりに数え挙げられているのかもしれない。何のために東京に出てきたんだろう、何のためにキレイになろうって思ったんだろう、何のために…。

 

 

 

友人・優佳の裏切りとヨシオの遊び人っぷりに絶望する双葉。彼女に祝福は訪れるのか、それとも田舎っぺアラサー女に希望はないのか。

 

 

続く
「愛と脱毛の東京OL物語」第1話〜脱毛器で深まる友情〜
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